王家からの海外派遣の話は、
確かに安全な地域への逃げ道になり得た。
だが——
派遣先のその国は、
強烈な日差しと熱風で知られた土地。
シルヴィアの肌は、
少しの紫外線でも傷つく。
そんな場所で生活するなど、
ありえなかった。
「彼女には……“彼女に合う場所”が必要なんだ。」
エルヴィンが選んだのは ウィステリア王国。
身分より才能が重んじられ、
移民を受け入れ、
戦争も革命も遠い、
豊かな平和国家。
そして何より——
彼は一度、
あの国の主である ウィリアム国王と出会っていた。
寡黙で実直な青年エルヴィンを、
国王は珍しく気に入り、
別れ際に静かに言った。
「困った時は言いなさい。助けになれるなら、私は助けよう」
それが社交辞令だったとしても構わない。
今のエルヴィンには、
頼れる可能性はひとつでも欲しかった。
エルヴィンは書簡をしたため、
信頼できる商人、古い友人、
そしてウィリアム国王へ——
複数のルートで送った。
どれか一つでも届けばいい。
彼はそれほど切羽詰まっていた。
その傍らでは、
亡命に必要な金貨の整理
最小限の荷物の準備
安全な馬車と御者の確保
を、誰にも悟られないよう行う。
屋敷の者たちは誰ひとり気付いていなかった。
エルヴィンが“国を捨てる覚悟”を固めているなど、
とても思いもしなかったのだ。
確かに安全な地域への逃げ道になり得た。
だが——
派遣先のその国は、
強烈な日差しと熱風で知られた土地。
シルヴィアの肌は、
少しの紫外線でも傷つく。
そんな場所で生活するなど、
ありえなかった。
「彼女には……“彼女に合う場所”が必要なんだ。」
エルヴィンが選んだのは ウィステリア王国。
身分より才能が重んじられ、
移民を受け入れ、
戦争も革命も遠い、
豊かな平和国家。
そして何より——
彼は一度、
あの国の主である ウィリアム国王と出会っていた。
寡黙で実直な青年エルヴィンを、
国王は珍しく気に入り、
別れ際に静かに言った。
「困った時は言いなさい。助けになれるなら、私は助けよう」
それが社交辞令だったとしても構わない。
今のエルヴィンには、
頼れる可能性はひとつでも欲しかった。
エルヴィンは書簡をしたため、
信頼できる商人、古い友人、
そしてウィリアム国王へ——
複数のルートで送った。
どれか一つでも届けばいい。
彼はそれほど切羽詰まっていた。
その傍らでは、
亡命に必要な金貨の整理
最小限の荷物の準備
安全な馬車と御者の確保
を、誰にも悟られないよう行う。
屋敷の者たちは誰ひとり気付いていなかった。
エルヴィンが“国を捨てる覚悟”を固めているなど、
とても思いもしなかったのだ。



