皆が寝静まる深夜。
ラノイ邸の灯りがすべて落ちた後、
今日もエルヴィンは静かに書斎へ向かう。

書斎の机には
——ウィステリア王国の地図
——国境付近の街道図
——そして王城内部から持ち帰った、極秘の外交文書
が並んでいた。

彼の指先は迷いなく動く。
彼はこの国がもう長くはもたないと、
いよいよ身に染みて感じていた。

重税、飢饉、王家の腐敗。
人々の不満の火種はあちこちにあり、
あとは誰かが油を注ぐだけ。

──革命は、確実に来る。

そんな国から一刻も早く、
妻を連れて逃げなければならない。