そして、
残酷な運命の足音が静かに迫る。

王都ラデスフローには、
日に日に重く、
淀んだ気配が漂い始めていた。

凶作と重税に苦しむ農民たちは王都に押し寄せ、
夜になれば武装した集団が松明を掲げて練り歩く。

怒りと不満、絶望と焦燥。
それらが重く空気を押しつぶしていく。

シルヴィアは窓辺から外を見つめながら、
伝え聞く街の不穏な現状を
どこか別世界の出来事のように感じていた。

シルヴィアが暮らす貴族街には
怒れる市民たちの熱狂は
まだ伝わってはいなかったのだ。
ただ遠くで何かが起こっている。

シルヴィアの部屋には
医師の処方した薬の余香が薄く残っている。
身体はまだ弱り、
外に出るだけで熱がぶり返しそうだった。