突如として、
デッサンが行われていた部屋の扉が
乱暴に開いた。

その場にいた職人が振り返るより早く、
エルヴィンはシルヴィアの名を叫んでいた。

「シルヴィア!」

そして彼の目に飛び込んできたのは――
蒼白を通り越し、
今にも崩れ落ちそうな妻の姿。
細い身体を覆うのは、
見るも無惨な娼婦まがいの衣装。

その瞬間、
エルヴィンの内側で何かが裂けた。

「……これは、どういうつもりだ」

低く、冷たく、震える声。
バイロンでさえ言葉を失い、
侯爵夫人は青ざめた。

エルヴィンは一歩でシルヴィアに近づき、
彼女の華奢な身体に
自身のコートをそっと被せると
彼女の身体を軽々と抱き上げた。

「もういい。もう、終わりだ。」

ひと睨みで全員がすくみ上がる。
エルヴィンは一切振り返らず、
怒りの炎を背に宿しながら
部屋を後にした。