シルヴィアをモデルにしてデッサンが始まったが、
まさに地獄だった。

バイロンは名声に追われ、
プレッシャーに飲まれ、
正気を失っていた。

「もっと露出を。もっと刺激を。もっとセンセーショナルに!」
そんな叫びとともに用意された衣装は、
ほとんど肌を隠す部分がない、
薄布一枚の娼婦めいたドレス。

こんなドレスで社交界に出れるはずもない。
誰がこんなドレスを着るのだろう。
芸術といえば、
何でも許されるのか。

逃亡に失敗し、
引きずり出されたシルヴィアは
思考を停止させる。
そうしなければ自分自身を守れなかった。

晒されたシルヴィアの肌に
太陽の光が容赦なく降りそそぐ。
紫外線を浴びれば皮膚は赤く腫れ、
照明に長時間晒されれば呼吸が浅くなった。
シルヴィアの肌が紫外線に弱いことを、
侯爵夫人は知っているはずなのに、
好き勝手するバイロンに注意することはない。

自然光を採り入れたいと窓は全開にされ、
強い光が容赦なくシルヴィアの肌を照らした。

シルヴィアの白い肌はすでに淡く赤く染まり、
額の汗は止まらず、
視界は揺らいでいる。

侯爵夫人はと言えば、
飾り立てた扇で口元を隠しながら
「もっと笑顔を。ほら、稼いでもらわないと困るのよ?」
と冷たい声をかけるだけ。

せめて早く終わってほしい。
シルヴィアは懸命に笑おうとした。
――でも、もう顔の筋肉が動かなかった。