「シルヴィア!!」
バイロンの叫びが後ろから聞こえる。

逃げないと。
もっと、もっと遠くへ。
そう思うのに足はもつれ、視界が揺れる。

そんなシルヴィアの前に立ち塞がったのは
侯爵家の従者たちだった。
義母が命じたのだろう。

「若奥さま、お戻りください」
そう言ってシルヴィアを捕らえようとする
従者の目は、
どこか厭らしい、
何かを期待するようなそんな目だった。

力なく抵抗するシルヴィアは、
そのまま抱きかかえられてしまう。

「いや……いやです……っ。離してっ」

涙の声もむなしく、
シルヴィアは屋敷へ連れ戻され、
そのままバイロンの準備した
衣装部屋へと押し込まれた。

「もう逃げないわよね?私の手を煩わせないで」
義母の冷たい声だけが、
胸の奥に深く突き刺さった。

シルヴィアは肩を震わせながらうつむき、
項垂れる。
逃亡は失敗に終わったのだ。

――そして、ここから彼女の身体は限界を迎えていく。