珍しく声を荒げたエルヴィンに、
シルヴィアはびくりと肩を揺らした。
ほんの小さな口論だった。
けれど、
その裏にある愛情の強さを
感じ取ってしまったからこそ、
胸が熱くなった。

彼女は嬉しかった。
本当は叫びたいほど嬉しい。
こんなふうに自分を気にかけてもらえたのは
──はじめてだった。

だが義母の存在が、
彼女の心を縛りつける。

──逆らえば、義母が怒る。
──侯爵家に迷惑をかけてしまう。

苦しくて、胸が締め付けられて、
それでも「休みたい」と言えない。

それがシルヴィアの“優しさ”であり、
同時に“呪い”でもあった。