『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―

目立つことは良いことばかりではない。
寄せられるのは賞賛だけではないのだ。

夜会では令嬢たちが囁き合っていた。

「あの人、すっかりバイロンの専属ね」
「夫よりデザイナーの方が熱心なんじゃなくて?」
「まあ、エルヴィン様はあんな幽霊みたいな子、興味ないでしょうし」

シルヴィアは笑顔の裏で、
心がじわりと冷えていくのを感じた。
否定する言葉を知らなかったからだ。

一方、王宮の執務室では――

「ラノイの奥方は、いまや国の顔だね」
「エルヴィンは幸運だよ」
「羨ましいものだな」

そんな同僚たちの声に
エルヴィンはただ黙って杯を置いた。

羨ましがられるほど、
何もしていないのに。
彼女に寄り添うどころか、
すれ違うばかりなのに。

胸の奥に、
ただ苦い痛みだけが残った。