そして──メジャーを落とした。
カランッ。

拾おうとして、
今度はスケッチブックを落とした。

ぱさっ。

「ふふっ、大丈夫よ。緊張しないで」
アリス王妃は微笑み、
まるで友人に話すように言った。
「あなた、ファッションが好きなの?」

「だ、だいすきです……!」

すると王妃は嬉しそうに手を叩く。
「素敵じゃない! 好きなことを仕事にできるのは幸せよ。私もね、国のために働けることが誇りなの」

エラの表情がふっと崩れ、
こわばっていた身体から力が抜けた。

その瞬間から、
会話は流れるように弾み始める。
エラは次々に質問した。

「動きにくいと感じるのはどんな時ですか?」
「理想のシルエットってあります?」
「ズボンは足首まで? それとももう少し短め?」

王妃は嬉しそうに答えながら、
「こんな格好で子どもたちと遊べたらいいのに」
「視察で長く歩くとスカートが絡まって大変なの」

と日頃感じていたであろう
女性としての“切実な願い”を語る。

その言葉はまさに──
エラとエルヴィンが求めてきた
ブランドの根幹だった。