アリス王妃からの依頼を
正式に受けたElara&Lanois。
まるで新しい風が吹き込んだようだった。

エルヴィンは胸の奥が熱くなるのを抑えきれない。
“女性の自由のために服を作りたい”
と願っていた自分にとって、
働く女性の象徴である王妃からの依頼は、
夢そのものだった。

しかし──当然といえば当然だが……
王妃に直接触れて採寸できるのは
女性であるエラだけ。

王宮に向かう馬車の中で、
エラはずっとメジャーを握ったまま震えていた。

「私が王妃さまの採寸なんて……恐れ多いっ」
「エラなら出来るよ。俺が保証する。自信を持って」
そう言って肩に手を置いたエルヴィンの声は優しく、
エラは少しだけ落ち着いた。

けれど、
王宮の重厚な門が開いた瞬間──
「ひえぇぇぇ……」
また震えだした。

案内されて入ったのは、
光の差し込む明るい小部屋。
アリス王妃は窓辺の椅子に腰かけ、
優しい笑顔でこちらを迎えた。

「ようこそ。エラさん、お待ちしていたわ」

その声は、
王妃というより“街のお姉さん”のように親しみやすい。

エラは少なくとも三回は言葉につまった後、
ようやく声を絞り出した。
「は、はいっ……! し、失礼いたします……!」