「お久しぶりね。エルヴィン・ラノイ殿。」

「は、はいっ……っ、陛下……！」
エルヴィンは膝をつきかけ、
慌てて姿勢を整える。

「そんなに硬くならなくてもいいのよ。今日はね……
あなたにお願いがあってきたの。」

アリス王妃は、
店内の服をゆっくりと見回しながら続けた。
「実はね、地方公務の時にいつも思うの。
この豪奢なドレス……とっても不便だわって。」

王妃はスカートの裾を軽くつまみ、
少しだけ持ち上げて見せた。

「歩き回りにくいし、子どもと話す時に膝を折るのも大変。それに、公務で動くことが多いのに、腕も脚も自由にならない。ふらっとどこにでも行くウィリアムが羨ましいのよ。」

エラとリディアが
「そうでしょうね……」と言いたげに
激しく頷いている。

アリス王妃は、
まるで密談でも始めるように声を落とす。

「私ね……
女性が履ける、街中で着られる“ズボン”がほしいの。
乗馬服みたいなのじゃなくて、
もっとスタイリッシュで、活動的で、でも上品で……
働く女性が堂々と履ける服。」

その場にいた全員の心臓が跳ねた。
王妃の求める服は、
まさにこのブランドの理念と一致する。