『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―

そしてシルヴィアにとって
嬉しい変化がまた一つあった。
今まで自分と距離を置いていた令嬢たちが、
話しかけてくるようになったのだ。

「シルヴィア様のあの肖像、本当に美しかったですわ!」
「白い髪が…まるで雪の精霊みたいで…!」

突然のことに戸惑いながらも、
シルヴィアは小さな喜びを感じていた。
生まれて初めて、
誰かが自分に“綺麗”と言ってくれたのだから。

そんな中で、エルヴィンだけは違った。
「……」

客間に置かれたシルヴィアの肖像画に 
彼は氷のように冷たい視線を送るだけ。
そんな彼の険しい横顔に、
シルヴィアは胸を刺されたような気がした。

(やっぱり……嫌われているのかな。余計なことをするなって思ってるのかも)

シルヴィアがいくら胸の内を知りたいと願っても
エルヴィンは決して語らなかった。

不器用で、真面目すぎて、
心の内をほとんど言葉にできない彼を、
シルヴィアはまだ知らない。