次の日、
提出を済ませたエルヴィンは
大仕事をやり遂げた達成感に包まれていた。

だが、
講師が言った一言で青ざめる。
「発表会では作品のウォーキングをお願いします。モデルは各自で手配してね。」

――あ、忘れてた。

エルヴィンの背中に、冷たい汗がつーっと落ちた。

「ど、どうしよう……。モデルなんて、誰も頼んでない――」

項垂れるエルヴィンに
同じく課題を提出したエラが声をかける。
「あら、あなたは奥様に頼むものだと思ってたけど。」

エルヴィンは顔を上げる。
確かにエルヴィンの作ったドレスの寸法は
シルヴィアのサイズだ。
彼女なら立派に着こなしてくれるだろう。

けれどエルヴィンは
シルヴィアをモデルにするのは気が引けた。
バイロンに着せ替え人形のように扱われて
苦しんでいた彼女に
また同じ思いをさせるのではないだろうか。

しかし背に腹は代えられない。
その日の夕食の席で
エルヴィンは切り出した。
「今日、無事に課題を提出してきたよ。」

「まぁ、おめでとうございます。良かったです。」
にこやかに微笑むシルヴィア。
彼女も自分のことのように嬉しそうだ。

「それでね。ついうっかり失念していたのだけど。今度その課題の発表会があるんだ。俺はドレスを作ったから、発表会にはそれを着てくれるモデルが必要で——」