『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―

その後のアトリエは、
以前にも増して熱気に満ちた。

二人は互いの作業に口を出し、
笑い合い、
時にぶつかりながらも同じ方向を向いて歩く。

「このカッティング、女性が腕を上げた時に引っかかりそうよ。」

「なるほど。じゃあ、ここのラインを少しだけ流すようにして……」

「そう、それ! そういうの!」

互いのアイデアが重なるたび、
作品に命が宿っていく。

エルヴィンは期せずして思う。
——こんなにも心が震えるほど、服作りが楽しいと感じるのは初めてだ。

シルヴィアへの愛が原点で、
エラとの化学反応が翼になり、
彼の夢は現実の形をとり始めた。

その後も何日も徹夜し、
布の山に埋もれながら
自分の理想の「女性の解放」の形を
追い求め続けてきたエルヴィン。
ようやく最後の一針を縫い終えた瞬間、
彼は深く息を吐いた。

まるで胸の奥から重石が外れるような解放感。
でもそれ以上に、
目の前に完成したドレスを見つめる瞳は、
熱と確信に満ちていた。

そこへ。
心配して起きていたシルヴィアが
静かに扉を開ける。

「エルヴィン様……もう朝よ? 徹夜続きで倒れてしまいます。中に入ってもいいかしら?」

エルヴィンは照れたように微笑み、
ドレスへ手を添えた。
「ちょうど完成したんだ……これが俺の答えだよ、シルヴィア。君に贈ったあの“自由に息ができるドレス”から始まった、俺の人生全部の答え。」

シルヴィアはそのドレスを見た瞬間、
胸が熱くなる。
布は軽く、空気のように滑らか。
飾りを排したシンプルなラインなのに、
着る人の身体をひときわ美しく見せてくれる。
その美しさは、
作り手の真心そのものだった。

「……エルヴィン様、すごい。本当に……すごいわ……!」

声が震え、目に涙が浮かぶ。
エルヴィンはそっと彼女の手を握り締めた。

「君がいたから作れたんだよ。」