『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―

個展が華やかに幕を閉じたあと。
シルヴィアはアトリエの片づけを手伝い、
帰宅すると――

玄関の扉がそっと開き、
ひんやりした夜気とともに、
大きな包みを抱えたエルヴィンが
静かに入ってきた。

「……エルヴィン様? それ……」
シルヴィアの胸が、どくん、と跳ねる。

エルヴィンはゆっくり微笑んだ。
どこか少年のような、
少し照れた笑顔。

「シルヴィア。君の……君が描いてくれたこの絵。
どうしても、手放したくなかった。」

包みを大切そうに胸へ抱きしめ、
言葉を探すように視線を落とし、
それからふっと息を吐く。

「他の誰の家にも飾られたくない。
この絵だけは、絶対、俺の手から離したくなかったんだ。」

低い声で、熱がにじむ。
ひたむきな想いに、
シルヴィアの喉がきゅうっと鳴り、
目元が熱くなる。

「……どうして……?」

震える声で問うと、
エルヴィンは一歩近づき、
包み越しに彼女の指をそっと握った。

「君が俺をどう見てくれているのか、
この絵が全部、語っていたんだ。

尊敬も、信頼も……愛情も。
そんなふうに俺を見てくれるのは、君だけだから。」

シルヴィアの心臓がぎゅっと掴まれたように
胸が締めつけられる。
涙が一筋、頬を伝った。