グラーフ伯爵家の令嬢シルヴィアは、
生まれ落ちたその瞬間から「白い子」だった。

陽光を透かすようなシルバーブロンドの髪。
雪のように薄い肌。
まつげまでも色素が薄く、
少し強い光を浴びただけで涙が滲む。

医師は「体質的に紫外線に弱い」と告げ、
以来、シルヴィアの外出は
いつも夕刻か曇りの日だけだった。

ほんの少し昼の陽射しを浴びただけで、
肌は真っ赤に腫れ、ひりつき、
夜には熱を持つ。
その痛みを覚えてから、
シルヴィアは自然と
カーテンの影ばかりを歩くようになった。

真夏でも長袖のドレスをまとい、
外出時には日傘が欠かせない。
彼女のそんな姿を
好奇の目で見る者は多かった。

「ほら、幽霊みたいに白いわ」
「目が合うと呪われそう」

子どもが発する無邪気な言葉は、
シルヴィアが成長するほど
鋭い棘となって彼女の心に刺さり、
深く沈んでいった。

もともと大人しい性格だった彼女は
人前ではますます小さな声になり、
笑顔も控えめになっていった。

それでも、父であるグラーフ伯爵だけは、
娘を深く愛していた。
弱々しく見える容姿の向こうに、
誰よりも優しく聡明な心があることを
知っていたからだ。