正月の二日目、藤乃と花音、それに須藤夫妻がうちにやってきた。


「由紀ー! 酒持ってきたよーー!」

「やったー! つまみ、たんまり用意したぞー!」

「……朝一なのに、もう酔っ払ってんのか?」


 うるせえ親父どもを横目に、俺と澪は須藤んちの車に荷物を積む。

 澪を運転席の後ろに乗せて、俺はその隣。

 運転席の藤乃が振り返って、穏やかに笑った。


「明けましておめでとう。じゃあ、行こうか」

「おう、おめでと。運転よろしく」

「明けましておめでとうございます。えっと、二日間よろしくお願いします」

「行こう行こう!」


 助手席の花音の声に合わせて、藤乃がエンジンをかける。

 車はゆっくり走り出した。


「宿までは二時間半くらいだけど、途中でパーキングに寄るから、全部で三時間くらいだね」

「おうよ」

「途中でお手洗いとか行きたかったら声かけて」

「……お前、そんなに面倒見良かったっけ?」

「お前の嫁さんに言ってるんだよ。言いづらいだろ」

「花音のしつけが行き届いてんなー」

「お兄ちゃん、はったおすよ」

「はいはい」


 澪は隣で楽しそうにニコニコしている。

 まあ、こいつが楽しいならいいんだ。


 パーキングで昼飯を食べて、そこで藤乃と運転交代。

 助手席に澪を乗せて走らせる。


「ずいぶん、山の中まで来ましたね」

「なー。普段平野に住んでるから、山道こえーな。雪積もってるし」

「お兄ちゃん、運転代わろうか?」

「お前に運転させるくらいなら自分でする」

「失礼な。私だって毎日運転してるよ」

「雪のない平野をな!」


 花音と言い合っている間も澪は楽しそうにしている。


「兄妹がいないので、瑞希さんと花音さんが仲良しなのが羨ましいです」

「ああ、少しわかるな」


 意外にも藤乃が頷いた。


「そうか?」

「うん。瑞希がお兄ちゃんの顔をするのも、花音ちゃんが妹の顔になるのもいいなって思ってたよ」

「なってます?」

「なってる」


 自分だとわからねえけど、澪が大きく頷いたから、たぶんそうなんだろう。