ロマンスに、キス




コロコロ、と舌の上で転がしたミント味ののど飴は、気づけばすっかり癖になっていた。


右に、左に、歯の裏に押しやって、また戻して。コロコロ、コロコロ。


口の中に広がるのは、ただひたすらに人工的な清涼感。正直、全然おいしくない。



噛み砕いてしまおうか、いっそ吐き出してしまおうか。そんなことを考えるくらいには、今のあたしは落ち着きがなかった。



……それより。


あたし、なんでこんなことしてるんだろう。



今日はせっかくの休日で、せっかくのデートのはずなのに。

胸が高鳴るどころか、朝からずっと、どこか心が空っぽで。

クローゼットの前に立っても、「かわいいスカートを履かなきゃ」って気持ちが、どうしても湧いてこなかった。



代わりに選んだのは、楽なパンツ。

髪も、いつもみたいに時間をかけて巻く気力なんてなくて、ただのストレート。

メイクだって、完璧からは程遠い。

手を抜いてる、って自分でもわかるくらいには。



それでも――



それでも、そこらへんを歩いてる女の子よりは、確実にかわいいはずだ。
肌も、顔も、雰囲気も。


「かわいい」だけは、ずっと守ってきた。
努力してきたし、怠ったことなんてない。