そんなことだけを考えながら、慎重に歩いていた、そのとき――
「好きです。付き合ってください」
突然、耳に飛び込んできた声。
反射的に足が止まる。
段ボールを抱えたまま、動けなくなる。
視界の端に、中庭の人影が映った。
女の子がひとり、背筋を伸ばして立っている。
表情は真剣で、指先が少し震えているのが、遠目でも分かった。
……告白だ。
タイミングが、悪すぎる。
今さら引き返す?
それとも、気づかないふりで通り過ぎる?
どうしよう、と心の中で焦った、その瞬間――
「ごめん。付き合えない」
低くて、淡々とした声。
驚くほど、迷いがない。
間も、揺れも、一切ない。
即答にもほどがある。
……もう少し、言い方ってものがあるんじゃない?
そう思いながら、あたしは段ボールを抱えたまま、視線を動かさずに、耳だけをそちらに向けた。



