ロマンスに、キス




あたしは、泣きはらして、ひどい顔になっているかもしれない。

だから、まっすぐに前を見られない。


うつむくあたしの肩越しに、佐野の声が聞こえる。



「別に、お前の男関係とかどうでもいいけど、頼むから急に機嫌悪くなんの、やめてくんね?」



いつだって、あたしが欲しい言葉なんて、佐野はひとつもくれない。

デリカシーのない男だし、他人に一切興味もない。その「他人」の中には、もちろんあたしも含まれている。


佐野は、あたしに興味なんてない。



「…佐野と、映画なんて来なければよかった」



思ってもないことを、また、口にしてしまう。

でも、素直になれない自分が、もどかしくて、情けなくて、胸が苦しい。



「佐野といたくない。楽しくない」



――そんなの、思ってないくせに。



本当は、もっと私に、もっとあたしのことを見てほしくて、優しくされたい。
佐野だけは、あたしを甘やかしてくれてもいいのに。
佐野だけに、そうされたいのに。




「佐野は、全然あたしのこと知らないし、一緒にいて疲れるし」




――一緒にいて疲れたことなんて、ない。



佐野があたしのことを知らないのだって、当たり前だ。
だって、話してないから。



それなのに、思ってもないことを口に出してしまう。
口から出るのは、真逆の言葉ばかり。