ロマンスに、キス




「お前、急に不機嫌になるのやめろよ」


「…なってないもん」


「なってんだろーが」



どっちが、って言いたいところだけど、今回は100パーセント私が悪い。

でも、それも認めたくない。謝りたくもない。佐野に、素直に謝るなんて、できるはずがない。



「で? なんなの? さっきの男」


「…知らない」


「知らないわけねーだろ」



佐野はそう言い放つと、席を立ち上がった。



え、帰るの? あたしを置いていくの?



胸がぎゅっと締めつけられ、思わず目で追う。
すると、佐野はドリンクバーの方へ歩き、水を注いでいる様子だった。



ほっ、…としてしまった。



あれだけ暴言を吐き散らしておきながらも、まだあたしのそばにいてくれる佐野。こんなに安心してしまう自分が、情けなくもある。



佐野は水の入ったコップを二つ持って戻ってきた。
ひとつは私の前に置かれ、もうひとつは、自分がなくなるまで飲んでいる。
映画のときから、喉がずっと乾いていたんだと思う。