ロマンスに、キス


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ある日の放課後。



「ちょっとこれ、職員室まで運んでくれる?」



そう声をかけられてしまった時点で、もう断れない。
断れない、というより――断るという選択肢が、最初から存在しない。



――“天使”。



そう呼ばれている以上、露骨に嫌な顔をするのは似合わないし、ましてや文句なんて論外だ。


だから私は、何も言わずに段ボールを抱え、校内を歩き出した。


もちろん、当番なんかじゃない。
完全に、ついで。
ついでに“感じがよさそうだから”選ばれただけ。


心の中では、「なんで、あたしが?」と、小さく毒づいている。


でも、それを顔に出すことはない。


だって知ってる。
ここで嫌そうな顔をしたら、「思ってたのと違う」って言われる。
にこっと笑っていれば、みんなは勝手に「かわいい」と言ってくれる。



かわいいは正義。
かわいいって思われている限り、多少の理不尽は飲み込める。


……飲み込めてしまうのが、問題なんだけど。



外廊下に差しかかったあたり。


段ボールが思ったより大きくて、前が少し見えにくい。
腕にじわりと重さがかかり、自然と視線は足元に落ちる。