ロマンスに、キス


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放課後、駅で待ち合わせ。

人混みの中で、つい鏡を取り出す。前髪をチェックして、微調整。身だしなみは、やっぱり大事。


それにしても、またあたしを待たせるなんて――許さない。心の中で小さく舌打ちしながらも、表情には出さない。



「君、ひとり?」



声をかけられて顔をあげると、そこには男二人。

いつもだったら、ちょっと転がして遊ぶくらい簡単な相手。でも今は、どうしても気分が乗らない。

もうとっくに終わってるけど鏡を片付けずに前髪を直すフリをする。



「ねえ、無視?」



目の前をうろうろされて、正直、邪魔だな、と思った。顔を前に向けた瞬間、その男たちの奥に、佐野の姿がふと目に入る。


佐野、わかってるよね。助けてほしいのに。

けれど、あいつが自分から動くなんて、絶対にありえない。自分でどうにかしろ、とでも言いたげな目。



「ごめんなさい」



それだけ言って、ぎこちなく間をすり抜ける。目の端で佐野を確認しながら、少し安心感が広がる。けれど同時に、なんだか照れくさい気持ちもこみ上げる。