ロマンスに、キス




肩の力がどっと抜ける。

やっと昼休みが戻ってきた――そう思った瞬間。


背中の方から気配。やっぱり。



「相変わらず、すげーな」



低い声。ヘッドフォンの片耳を外しながら、奥の死角から佐野が出てくる。


佐野の前では天使でいられない。というより、天使でいようと思っても、崩される。



「俺の前では、天使でいてくれねーの?」


「お望みなら、いくらでも?」


「嘘だよ、気持ちわりぃ」



ケラケラ笑いながら近づいてくる、その顔がムカつく。

みぞおちに拳を一発くれてやると、佐野は本気でよろけた。



「…っ、手加減てもんがあんだろ!」


「手加減?男が女にするものでしょ」



口では軽く返したけど、胸の奥はふわふわしてる。あんなに空腹だったのに、屋上の風と陽のあたたかさと…佐野の声で、全部どうでもよくなった。



「…佐野、眠い」



袖を引っ張って、佐野がさっき座ってた死角へ連れていく。