勝手に話を進めないでよ。
主語にされてるのはあたしなのに、肝心のあたしだけが蚊帳の外。
しかも。
真横から割って入ってきたヘッドフォン男は、あたしの存在なんて最初からなかったみたいに、一度も視線を寄こさない。
向けられているのは、猿たちへの露骨な睨みだけ。
この、“あたし”を完全に無視して。
その事実に、じわっと苛立ちが広がる。今までずっと、見られる側だったのに。無視されるなんて、想定外すぎる。
「お前、なんなの?この子の彼氏なの?」
猿のひとりが、吐き捨てるみたいに言う。
その言葉に、ヘッドフォン男は気怠そうに片眉を上げただけだった。
答える気もなさそうに、だるそうな溜め息をひとつ。
「あー。そう言えば、静かにしてくれるわけ?」
意味が分からなくて、思考が一瞬遅れる。
その隙に、胸の奥からイライラが一気にせり上がってきた。
あたしを置いて話さないで。
勝手に決めないでよ。
無視しないでくれる?
文句が喉元まで込み上げた、その瞬間。
男が、突然クルッと振り向いた。
距離が、近い。
思考が追いつく前に、一拍もなく――
指先が、あたしの顎に触れる。



