ロマンスに、キス




猿みたい。




……なんて思っても、もちろん口には出さない。
代わりに、また作り物の笑顔を貼り付ける。



「お兄さんたちは、今からどこ行くんですか?」



興味なんて、1ミリもない。
それでも首をちょこんと傾けて、無邪気そうに聞いてみる。



案の定だった。

目の前の“猿”たちは、一瞬で頬を赤らめ、急に口数が減る。
照れたように、落ち着かない視線が宙を泳ぐ。



「え、えっと俺らは……」



1匹がようやく口を開いた、その瞬間――



「さっきから、うるせぇんだけど」



低くて、不機嫌そうな声が、すぐ真横から落ちてきた。


空気が、一気に変わる。

黒い大きなヘッドフォンを片耳だけ外しながら、男が無遠慮に割って入ってくる。



「はぁ?お前、なに?」


「そっちこそ、誰だよ」



語気を荒らげて、猿たちが一斉に噛みつく。
空気がさっきまでの軽さを失って、急にささくれ立つ。



……いや、
あたしからしたら“あんたたち全員、誰?”なんだけど。