もう、これでほんとに最後。学校で会っても無視する。
「じゃーな、一千華」
そう言い残して、大量のお菓子の入った袋をぶら下げたまま教室を出ていく佐野。
そのとき――振り向きざまに見せた、あのニッと笑う顔。不覚にも、胸がグッと揺れた。
ハッとして慌てて叫ぶ。
「許可なく名前で呼ばないで!!」
でも、視線はもう逸らせなかった。
切れ長で少し奥二重気味の目。通った鼻筋、シャープな顎ライン。 頬骨の上のほくろが妙に色っぽい。 薄めの唇が笑うと無邪気さがにじむ。ムラッと落ちる無造作な前髪が、片目に少しかかって。
――認めたくないけど。
どう見たって、あたしのタイプだ。
今まで何十回と告白されてきたけど、こんな「顔だけは完璧」みたいな男、見たことなかった。
でも。性格に難あり。強制わいせつ罪犯す猿。
絶対もう会わない。
そう心に決めて、空っぽの空き教室にひとり立ち尽くした。


