【完】ロマンスに、キス




キッと睨んでやると、はは、と目を細めて笑いやがる佐野が、あたしの頭を撫でてきた。



「……嘘つき」



そう呟くと、佐野は軽く首を傾げて、



「どっちが」



なんて言う。


あたしの嘘は、いいんだよ。
だって、ほんとは経験なんて、これっぽちもないし。


でも、佐野のはダメ。
経験あるくせに、ないって言う嘘は、ダメ。


手に力を込めて、佐野の手を振り払う。



「……そういう嘘、よくない」


「そうだな」


「どうせ、元カノだっていっぱいいるんだろうし」


「それは、どうだろうな」



……いるくせに。

睨むみたいに見上げたら、不可抗力で上目遣いになってしまって、でも、こんなの、佐野には効かないってわかってる。



「……パンケーキのときの女だって、どうせそんな感じだろうし」



佐野は頬杖をついて、何かを思い出すみたいに宙を見上げた。

一拍。

それから、名前すら思い出せん、って。

最低。