「か、柏谷さん……いつも、非常階段にいるよね」
心臓が、嫌な音を立てた。
「……え」
「知ってるよ。午前中に二回トイレ行ったのも知ってるし。昨日さ、重い荷物持ってた男、助けてたよね。……あれ、嫉妬したんだけどなぁ」
――なに、それ。
背中を、冷たいものが這い上がる。
ぞわっと、全身に鳥肌が立った。
ストーカーだ。
はっきり、そう思った。
なんで?
誰?
どうして、あたし?
かわいいから?
目立つから?
優しくしたから?
理由を探そうとする頭が、追いつかない。
怖い、という感情だけが、先に膨れ上がる。
「お試しでもいいからさ。一週間だけでいいから、付き合ってほしいなぁ」
…もし、こいつの言う通りに付き合ったら。
あたしは、無事でいられるだろうか。
それとも。
断ったほうが、もっと危ない?
喉が、ひりつく。
「柏谷さん、俺のこと覚えてない?」
にじり寄る距離。
目が、気持ち悪いくらいに期待で光っている。
「この前、階段でプリント拾ってくれたじゃん。あれ、嬉しかったな。まあ、わざとなんだけどっ」
照れたみたいに、頬を赤らめる。
その仕草を見た瞬間、胃の奥がひっくり返る。
――吐き気がした。



