ロマンスに、キス




「それで、本題なんだけど……」



相手の声が、少しだけ震える。
嫌な予感は、だいたい当たる。



「柏谷さんのこと、実はずっと見てて……好きだから、付き合ってほしいんだ」



告白。


一瞬だけ間を置いて、あたしは視線を落とす。
まつ毛が影を落とす角度まで、ちゃんと計算して。



「……ごめんね。今、恋愛する気分じゃなくて」



声を少しだけ柔らかくして、申し訳なさそうに。悲しい顔を作るのも、忘れない。

断るときは、相手に恨まれないのがいちばん大事だ。


ほんとは、恋愛する気分じゃないわけじゃない。ただ、この人とじゃないだけ。


今は、こんなことに時間を費やしてる場合じゃない。

あたしから、幸せが遠のいていく実感があるからだ。

立ち止まっていると、置いていかれる。選ばれる側でい続けなきゃいけないのに、選択を間違えたら終わりだ。



早く。
あたしに似合う男を見つけて。
ちゃんと、幸せになりたい。


安心できて、誇れて、連れて歩きたくなる人。
周りから「お似合いだね」って言われる未来。


目の前の男なんて、論外だ。