……消す、んじゃなくて。
このまま、落としてしまおうか。
階段の下に。
画面が割れて、全部、壊れてしまえばいい。
そんな考えが、ふっと浮かぶ。
でもすぐに、パパの顔がよぎる。
悩みに悩んで、一緒に選んだこと。「大事に使ってね」って言われたこと。
それで、指が止まった。
そんなこと、できないよなぁ。
〈今日、会える?〉
〈そろそろ付き合わない?〉
画面に並ぶ、読むのも嫌になるくらい甘ったるい言葉たち。
指で流すたびに、胸の奥が少しずつ擦れていく。
こういうのが、欲しかったはずなのに。
大切にされてるってわかる言葉。選ばれてるって錯覚できるやつ。
なのに、今は気持ち悪いだけだ。
あたしの連絡先には、同じ学校の人は誰もいない。
佐野を、除いて。
もともと年上が好みだし、余裕があって、お金を持っている人がいい。
同い年なんて論外。将来も曖昧で、言葉も安くて、約束も守れない。
あたしの欲しい言葉も、欲しい物もくれない人間は、もっと論外だ。
――そうやって、ちゃんと線を引いてきたはずなのに。
その線を、佐野だけが平気な顔で越えてきた。
欲しいものをくれたわけでもないし、甘い言葉を言ったわけでもない。
むしろ、何もくれなかった。
それなのに。



