ロマンスに、キス




次の日。朝から廊下がざわついていた。



「柏谷さん、付き合ってるらしいよ」


「相手、佐野くんでしょ?」



背中にまとわりつく声。原因はわかってる。あの無神経ヘッドフォン男。



「結構、お似合いじゃない?」

「そう?佐野くんかっこいいけど、王子様とはまた違うじゃん。柏谷さんにはもっと王子様っぽい人が似合うと思う」



――そうそう。もっと言って。

私に似合うのは王子様。あんな雑な男じゃない。“お似合い”なんて言葉、聞くだけで虫唾が走る。私が誰と並ぶかは、勝手に決めないでほしい。

靴箱で上履きを履き替えながら、心の中で毒づく。

ほんと、みんな噂好き。人の恋愛話で盛り上がるしかないの?暇すぎ。階段を上がりながら、気にしないふりで息を吐く。けど心の中では、噂してる子たちに「見る目ないね」って笑ってる。