負け犬のメイサちゃんは100日後に本当の恋を知る

 夜、藤也から電話がかかってきた。


『ちゃんと勉強してる?』

「してるよ。藤也にかっこ悪いとこ見せらんないもん」

『それは今さらだろ。88日間、俺はメイサの負け犬っぷりをずーっと見てる』

「なのに付き合ってくれて、藤也は優しいねえ」

『俺優しくなんかねえよ。つーか別に、ボランティアじゃないしさ』


 どういう意味だろ?

 ボランティア……奉仕じゃない。

 藤也にとってもいいことがあるってことかなあ。

 わかんない。


「どういうこと?」

『自分で考えろ。で? 試験まであと三日だけど間に合いそう?』

「だ、だいじょぶ……」

『答えが大丈夫じゃねえ。つっても、今店が忙しくて、明日も見てやれねえんだ。ちゃんと自分で何がわかんないのか確認しろ。質問を投げといてくれたら、飯のときにまとめて答えるから』


 一年生にそこまでやらせるのはどうなの。

 今さらかもだけどさ!


「ありがと、ハニー」

『いーえ、ダーリン。俺のダーリンのかっこいいとこ見せてくれよ』

「うん。あ……なんでもない」


 危ない、勢いで「愛してる」って言うとこだった。

 さらっと言っちゃえば、藤也もさらっと返してくれる気がするけど、1回言い損ねると、今度は言い出しにくい。


『なんだよ』

「ううん。あくびが出そうだっただけ。じゃあ、そろそろ寝るね。おやすみ」

『おう。おやすみ、ハニー、愛してる』

「えっ、ちょ」


 聞き返す前に電話はブチッと切れた。

 私も、言いたかったのに。

 画面を睨んでから一言送って、スマホを枕の下に突っ込んだ。


「私もダーリンのこと愛してる」