負け犬のメイサちゃんは100日後に本当の恋を知る

 昼休みに、1組の教室に顔を出した。


「柊ちゃん、いるー?」

「メイサちゃん、なあに?」


 廊下側の席でスマホをいじっていた柊ちゃんが顔を上げる。

 黒いさらさらの髪、丸くてちょっと垂れた瞳、優しそうな顔つき。

 私とは全然違う、かわいい女の子。


「……昨日のお礼、言いたくて」

「ああ、いいよ、別に。須藤くんにもお礼もらったし」

「そうなの……?」

「うん。市販されてない、苗!」


 柊ちゃんはニコニコしてるけど、私にはちょっと良さがわからない。


「これ、私から」

「お菓子だ」

「うん。一ノ瀬が、柊ちゃんは和菓子が好きって言ってたから。あ、聞き出したとかじゃないからね。のろけ話の中で聞いただけだから」


 昨日、駅の和菓子屋さんで買ってきた紙袋を差し出す。


「ありがと。ここ、好きなんだ。嬉しい」

「……柊ちゃん、かわいいよね」

「そう? メイサちゃんもかわいいよ?」


 嫌みかなって思ったけど、柊ちゃんはやっぱりにこにこして、声を落とした。


「須藤くんと話してるときが、一番かわいい」

「……! ちょ、それ」

「言わないよ、誰にも。あ、須藤くんには言ってもいい?」

「……柊ちゃん、いい性格してんね」


 ついそう言ったら、柊ちゃんはニヤッと笑った。


「かわいいだけの女の子とか、いるわけないでしょ」


 そりゃ、そうだ。

 この子に負けてから、85日。

 私はまだ、柊莉子に敵わない。