負け犬のメイサちゃんは100日後に本当の恋を知る

 部活中、ふと気づいたら藤也と柊ちゃんが校庭の隅の花壇で並んで座り込んでいた。

 いや、別に私、彼女じゃないし。

 柊ちゃんは颯の彼女なんだから、藤也とどうこうなんて、ありえない。

 でもつい横目で見ちゃう。

 柊ちゃんの柔らかくて穏やかな笑顔。

 藤也が頷く様子。

 何を、そんなに楽しそうにしてるんだろう。


「おい、三枝」

「わ、びっくりした。どしたの、一ノ瀬」

「見過ぎ。気になるの分かるけど、見過ぎ」

「そ、そんなに見てないし、気になんない。……柊ちゃんはあんたの彼女だし、藤也に色目使う子じゃないし、藤也だって、そんなことない。そうだったとしても、私、藤也の彼女じゃないし、とやかく言う権利なんてないよ」

「あはは、早口過ぎて何言ってんのかわかんねえよ」

「うっさいな。休憩したら体冷やす前にストレッチしてよ!」


 吹き出す一ノ瀬にタオルとスポドリを押しつける。

 次のメニューを確認しようとボードを手に取ったら、手元に影が落ちた。


「ん、わ、藤也」

「メイサ、なーに楽しそうにしてんの」

「してない」

「嘘つけ、従姉弟くんと笑ってただろ」

「……してない。藤也が柊ちゃんと楽しそうにしてたから、私、楽しくない」


 ほんと、先輩の威厳ゼロ。

 藤也に負け犬先輩って呼ばれても言い返せないくらい、かっこ悪い。

 呆れたかな。

 嫌われたかな。

 おそるおそる見上げた藤也の顔は……なんでか、満面の笑みだった。


「なに?」

「メイサちゃんはかわいいなー。あのな、次の植え替えで、取り扱いたい苗の相談してたんだよ」

「あーそっか」

「うち、造園屋だろ? だから、植えたい苗と値段の話してた」

「ごめん。真面目な話してたのに」

「いーよ、謝んなくて。81日目にめちゃくちゃかわいかったから。でもさ」


 藤也は声を潜めて、私の耳元に口を寄せた。


「俺、柊先輩に浮気なんてしないから、安心してくれよ」

「ばか。ばかばか」

「あはは、じゃあ、部活の後で」


 ニヤッと笑って、藤也は行ってしまった。

 全部お見通しで、ほんと、敵わない。

 藤也の背中を見てたら、その向こうで柊ちゃんがホースを運んでいて、一ノ瀬が手伝おうとして断られていた。ストレッチしろ。