負け犬のメイサちゃんは100日後に本当の恋を知る

 放課後、昇降口を出たところで藤也が駆け寄ってきた。


「メイサ、ホワイトデー何がほしい?」

「えっ、くれるの?」

「当たり前だろ」


 つい聞き返したら、藤也は唇を尖らせた。

 練習だし、まさかもらえるとは思ってなかったから驚いたな。


「んだよ、俺、ホワイトデーも返さない薄情な男だと思われてたわけ?」

「練習だからさ」

「本命のだろ? なら、俺も本命のお返しの練習させてもらうから」

「はー……あんたがモテる理由、わかった気がする」

「今更かよ。今日で69日目だぜ?」


 藤也はくすっと笑って私の髪を撫でた。

 こういうのも自然にやるんだよなあ。

 イケメンじゃなきゃ許されない仕草だ。


「それに、あれ、手作りだろ? 大変だったんじゃないの?」

「まあ、そこそこ」


 どっちかというとパパが「そのすごいやつ誰にあげるの!? ま、まさか彼氏!?」って騒いでるのをかわすのが大変だった。言わないけど。


「ばーか、そこで『すごい大変だったから、すごいお返し楽しみにしてる』くらい言えよ」

「えー? んー、美味しかった?」


 おそるおそる見上げると、藤也はニヤッと笑って私を見た。


「うん。めっちゃ美味かった」

「そっか、よかった。じゃあ、お返し楽しみにしてる」

「おうよ。結局何がほしいんだ?」

「藤也が選んでくれるなら、何でも嬉しいよ」

「なんだよ、それっぽいこと言えるじゃん」


 私は、颯のことはもちろん、藤也のことを、きっと全然知らない。

 だから、もっと教えてほしい。

 それを何て言えばいいのかが、私にはわからない。