負け犬のメイサちゃんは100日後に本当の恋を知る

 その日、私はこっそり須藤造園に行った。

 ……藤也の家だ。

 お花屋さんを覗くと、きれいなお姉さんが葉っぱをむしったり、茎を切ったりしている。

 お姉さんがぱっと顔を上げて、目があった。


「いらっしゃいませ」

「えっ、あ……」

「なにかお探しですか?」

「す、すみません。えっと、私、藤也……くんの……知り合いで」

「あら、そうなの。……あ、メイサちゃん?」


 お姉さんはニコッと笑って花をバケツに移した。


「藤也がお世話になってます。藤也の母です」

「お母さん!? お姉さんかと……藤也くんのおうち、みなさん綺麗ですね」


 近づいてみると、お母さんはすごく背が高くて、キリッとした美人だった。

 妹さんたちはお母さんに似ているんだな。


「ありがとう。えっと、藤也は手伝いに出てるのだけど」

「あの、……藤也くん、お父さんと仲が悪いみたいだから……その、お節介なんですけど、なんでかなって」

「ああ、そういうこと。えっとね、反抗期と、あとかっこ悪いんだって」

「かっこ悪い? あのイケオジが?」


 つい砕けた言い方をしてしまって、お母さんが吹き出す。


「あはは、そうね。藤乃さん、顔いいよね。あのね、男の人なのに花束作るのが上手いし、物腰が柔らかいから、それがかっこ悪いって、藤也は言ってるのよ」

「はあ……よくわかんないです……」

「藤乃さんは、藤也が怒っても笑って流すから余計にイライラするのよね。でも、前より落ち着いたし、大丈夫じゃないかな。ありがとう、藤也のことを心配してくれて」

「い、いえ……藤也くんにはお世話になりっぱなしなので……。あの、すみません。私がここに来たこと、藤也くんには黙っててもらえますか? きっと、余計なお世話って怒られちゃうから」


 そう言うと、お母さんはニコッと笑った。


「わかりました。秘密ね」

「ありがとうございます。……このお花、いただいてもいいですか?」

「もちろん」


 目の前にあったオレンジ色の花を指さす。


「カーネーションね。じゃあ、これはおまけに」


 お母さんはカーネーションにカスミソウをつけて、くるっと透明なシートで巻いて渡してくれた。

 お金を払ってお店を出る。

 今日で47日。

 私は少しは変われただろうか。