その平和が破られたのは夕方のことだった。
晩飯の食材を買いに詩音ちゃんと美海と家を出たら、詩音ちゃんのばあさんが立っていた。
「詩音! 行くよ!」
「え、なに!? 行かないよ、詩音、匠海さんと買い物に行くの!」
「またそんな子供みたいな話し方して!」
「待ってください、何なんですか!?」
慌てて詩音ちゃんとばあさんの間に入った。
騒ぎを聞いて、親父も家から出てきた。
「またですか。詩音さんは我が家で預かると、矢崎さんからも言われてるでしょう?」
「お前! お前が娘を捨てたりしなければ!!」
ばあさんが興奮したように叫んだ。
どういうことだ?
思わず親父を見たら、呆れた顔でため息をついていた。
「三人とも、夕飯の買い物よろしく。こっちはなんとかしておくから」
「う、うん……」
詩音ちゃんと美海と一緒に、急いでその場を離れた。
二人も困惑の表情だけど、俺にも何も分からない。
買い物を終えて帰る頃には、ばあさんはいなくなっていた。
「ただいま……。なあ、さっきばあさんが言ってたのって……」
リビングで雑誌をめくっていた親父に聞くと、めっちゃ嫌そうな顔をされた。
「おかえり。あれな……遙さん、詩音ちゃんのお母さんと近い世代の男にはみんなに言ってるんだよ」
「そうなの……?」
詩音ちゃんが不安そうに聞いた。
「うん。つっても、俺と遙さんはそんなに近くないけどね。ギリ小学校が被るくらいだから。だから付き合ってたとか、まったくないよ。俺、小学生の頃から母さんにべったりだったし」
「そうそう」
母さんが台所から出てきて、俺が持っていたエコバッグを受け取った。
「お父さんは私が幼稚園の頃から私にべったりだったから、他の人が近寄る隙なんてなかったのよ」
「なのに、母さん、中学生に上がったときに『川瀬先輩に付きまとわれて彼氏できないんだけど』とか言ったんだぞ。ひどいよなあ」
「近所のお兄ちゃんとしか思ってなかったからね」
「……それでよく、結婚まで持って行ったね」
美海が苦笑した。
「うん。その時に『俺がいるだろうが!』って力説したんだ」
「中学校の廊下でね」
「そういうわけで、俺と遙さんの間には何もありません」
親父はそう言って、また雑誌をめくり始めた。
二人が幼馴染みなのは知っていたけど、馴れ初めは初めて聞いた。
「あれ、夜の母さんも幼馴染みだよな?」
「ええ。だから父さんの告白の時も隣にいたし、『付き合ってなかったの!?』って言われたわよ」
「うわあ」
「だから、匠海もね」
母さんが苦笑した。
「いつまでも『近所の親切なお兄さんポジション』に収まってると、ある日突然『彼氏紹介するね』なんて言われるのよ」
「なんの話だよ!?」
思わず突っ込んだら、親父が力なく笑った。
「そう言いかけた人の言うことは聞いとけよ」
「うっせえ……」
美海と母さんは笑いながらリビングから出ていってしまった。
詩音ちゃんはぽかんと俺を見上げている。
「……詩音ちゃん、彼氏できる予定ある?」
「ない。女子校だし」
「だよね。飯の用意するから手伝ってよ」
「うん!」
二人で晩飯の用意をして、みんなで食べた。
片付けは親に任せて、俺と詩音ちゃんはそれぞれ荷造りをした。電車の時間を確認して、「おやすみ」と言って分かれた。
晩飯の食材を買いに詩音ちゃんと美海と家を出たら、詩音ちゃんのばあさんが立っていた。
「詩音! 行くよ!」
「え、なに!? 行かないよ、詩音、匠海さんと買い物に行くの!」
「またそんな子供みたいな話し方して!」
「待ってください、何なんですか!?」
慌てて詩音ちゃんとばあさんの間に入った。
騒ぎを聞いて、親父も家から出てきた。
「またですか。詩音さんは我が家で預かると、矢崎さんからも言われてるでしょう?」
「お前! お前が娘を捨てたりしなければ!!」
ばあさんが興奮したように叫んだ。
どういうことだ?
思わず親父を見たら、呆れた顔でため息をついていた。
「三人とも、夕飯の買い物よろしく。こっちはなんとかしておくから」
「う、うん……」
詩音ちゃんと美海と一緒に、急いでその場を離れた。
二人も困惑の表情だけど、俺にも何も分からない。
買い物を終えて帰る頃には、ばあさんはいなくなっていた。
「ただいま……。なあ、さっきばあさんが言ってたのって……」
リビングで雑誌をめくっていた親父に聞くと、めっちゃ嫌そうな顔をされた。
「おかえり。あれな……遙さん、詩音ちゃんのお母さんと近い世代の男にはみんなに言ってるんだよ」
「そうなの……?」
詩音ちゃんが不安そうに聞いた。
「うん。つっても、俺と遙さんはそんなに近くないけどね。ギリ小学校が被るくらいだから。だから付き合ってたとか、まったくないよ。俺、小学生の頃から母さんにべったりだったし」
「そうそう」
母さんが台所から出てきて、俺が持っていたエコバッグを受け取った。
「お父さんは私が幼稚園の頃から私にべったりだったから、他の人が近寄る隙なんてなかったのよ」
「なのに、母さん、中学生に上がったときに『川瀬先輩に付きまとわれて彼氏できないんだけど』とか言ったんだぞ。ひどいよなあ」
「近所のお兄ちゃんとしか思ってなかったからね」
「……それでよく、結婚まで持って行ったね」
美海が苦笑した。
「うん。その時に『俺がいるだろうが!』って力説したんだ」
「中学校の廊下でね」
「そういうわけで、俺と遙さんの間には何もありません」
親父はそう言って、また雑誌をめくり始めた。
二人が幼馴染みなのは知っていたけど、馴れ初めは初めて聞いた。
「あれ、夜の母さんも幼馴染みだよな?」
「ええ。だから父さんの告白の時も隣にいたし、『付き合ってなかったの!?』って言われたわよ」
「うわあ」
「だから、匠海もね」
母さんが苦笑した。
「いつまでも『近所の親切なお兄さんポジション』に収まってると、ある日突然『彼氏紹介するね』なんて言われるのよ」
「なんの話だよ!?」
思わず突っ込んだら、親父が力なく笑った。
「そう言いかけた人の言うことは聞いとけよ」
「うっせえ……」
美海と母さんは笑いながらリビングから出ていってしまった。
詩音ちゃんはぽかんと俺を見上げている。
「……詩音ちゃん、彼氏できる予定ある?」
「ない。女子校だし」
「だよね。飯の用意するから手伝ってよ」
「うん!」
二人で晩飯の用意をして、みんなで食べた。
片付けは親に任せて、俺と詩音ちゃんはそれぞれ荷造りをした。電車の時間を確認して、「おやすみ」と言って分かれた。



