詩音と海と温かいもの

 平日だったから遊園地は空いていて、でもあちこちにクリスマスの飾りがあって、楽しい。


「匠海さん、何に乗ろっか」

「あの船みたいなやつ乗りたいな」

「モノレールみたい」


 二人で、手前から順番に乗っていく。ぐるぐる回る乗り物で目を回したり、高く跳ね上がって落ちる乗り物で悲鳴を上げたりした。

 田舎の遊園地だからって舐めてると、普通に酷い目に遭うんだ、この遊園地。

 でも匠海さんがずっと手をつないでいてくれるから、それすら楽しかった。


 昼には一緒にハンバーガーを食べた。

 前に来たときは美海と夜と三人で食べたハンバーガーを、今度は匠海さんと二人で食べている。


「おいしいねえ」

「詩音ちゃん、口の端にケチャップついてる」


 匠海さんが私の口元を指で拭った。指についたケチャップを匠海さんが舐めていて、それを見てたら、また胸がそわそわした。


「午後はスケートリンクに行ってみようか」

「あ、うん。そうだね」


 ぼけっとしていて返事が遅れたけど、匠海さんは何も言わなかった。

 スケートは難しくて、私は転んでばかりだった。匠海さんはずっと私と手をつないでいてくれて、たまに一緒になって転んでいた。


「ごめん、匠海さん」


 何度目かに転んだとき、私は匠海さんの手を離した。


「手、つないでると匠海さんも転んじゃうから離しててよ」

「やだ」


 匠海さんはしゃがんで、転んだ私の顔を見た。


「離さないって言っただろ。……文化祭の時、手え離しちゃったのを結構後悔してるから、つないでてほしい」

「……うん」


 真剣な顔で言われたら、私は頷くしかなかった。

 また手をつないで立ち上がって、さっきより、ゆっくり滑った。

 見上げたら匠海さんと目が合って、朝と同じ甘ったるい笑顔で私を見ていて、どんな顔をすればいいか、ちっともわからなかった。

 二時間くらい滑ってから、スケートリンクを出た。

 園内のカフェでクリスマスメニューのココアを頼んだ。

 ココアに、クリスマスっぽいデザインのマシュマロがランダムに乗っていた。


「かわいい、サンタさん乗ってる」

「俺のは星だな。詩音ちゃんにあげる」

「えっ、じゃあサンタさんあげるね。匠海さんは詩音のサンタだから」

「そうなん?」


 不思議そうに匠海さんが私を見た。


「うん。詩音が悲しいと助けてくれて、困ってると手をつないでくれる、いつでも欲しいものをくれるから、サンタさん」

「……そっかあ」


 匠海さんは目を細くしてサンタさんのマシュマロを見ていた。


「そういう意味なら、詩音ちゃんは俺の星なんだけど……んー、何でもない。何か恥ずかしいこと言ったわ」

「気になるなあ」

「秘密。これ飲んだら観覧車乗って帰ろうぜ。駅前で晩飯食べに行こう。カフェのパスタが気になってたんだ」


 なんか誤魔化されたけど、まあ、いっか。

 マシュマロを溶かしたココアを飲んで、また歩き出した。