詩音と海と温かいもの

 翌朝、匠海さんの腕の中で目を覚ました。

 十二月も後半となると朝は寒くて、ベッドから出たくない。温かい匠海さんの腕の中からは、なおさらだ。


「詩音ちゃん……起きた?」


 くっつき直していたら、匠海さんが起きてしまった。


「起きてない。寒い」

「遊園地行くんだろ?」

「そうなんだけど。寒い」

「そんな寒がりだっけ」

「んー、匠海さんに甘えてるだけ」


 そう言うと、背中と頭を抱えられて、ぎゅうっと抱きしめられた。

 だめだ、ますます起きられない。


「……匠海さん、遊園地に行こうか」

「もう甘えなくて平気?」


 顔を上げると、匠海さんは甘ったるい顔で私を見ていた。

 なんだろう、心臓が変な音を立てた。


「えっとね、ベッドで甘えるのは、また夜にね。匠海さんと手えつないで、遊園地行きたい」

「わかった」


 最後にもう一度だけ、ぎゅっと抱きしめ合ってベッドから出た。


 たぶん恋人同士なら、キスとかしちゃうんだろうな、って思うハグだった。

 いやー、私にそんな相手ができる気がしないな。

 中高一貫の女子校だから、出会いとかないし。

 匠海さんにそんな相手ができたら、私はちゃんと我慢できるだろうか。……ちょっと、難しいかも。



 身支度と朝ごはんを済ませて、コートを羽織ったところで、匠海さんに呼び止められた。


「これ、ちょっと早いけどクリスマスプレゼント」


 被せられたのは、大きなショールだった。

 明るいベージュのチェック模様で、薄手だけど温かい。


「ありがとう……!」

「この色なら制服にも合わせやすいかと思ったんだ。俺が巻いてもいい?」

「お願いします」


 匠海さんはショールの前の方を結んで、ポンチョみたいに肩に被せてくれた。


「嬉しい、ありがとう。あ、詩音も匠海さんにクリスマスプレゼント持ってきたよ」


 カバンから小さな紙袋を取り出した。


「ハンドクリーム。匠海さん、水仕事ばっかで手荒れしてるから。ちゃんと匂いがしないやつ選んだからね!」

「ありがとう。もらえると思ってなかったから、嬉しい」


 匠海さんは笑顔でプレゼントを受け取ってくれた。

 二人で手をつないで部屋を出る。