「川瀬くん、なに油売ってるの。今かき入れ時なんだから」
そしてお姉さんは、私を見下した。
「妹さん?」
「や、違います。俺、先に休憩入らせてもらったんで」
「えー、困るよ。ちょうど焼きそばの麺がきれちゃったし、野菜ももう少ないから、取りに行ってもらおうと思ったのに」
お姉さんはちらりと私と、近くにいた美海を見た。
……なんか、嫌な感じ。
そう思ったのが顔に出ちゃったみたいで、匠海さんが私に手を伸ばした。
でも、その手をお姉さんが取った。
「妹さんなら自分たちでのんびり周ってもらえばいいでしょ。また落ちついたら合流したらいいし」
ふと、私の前に夜が立ちふさがった。
「すみません、夏休みぶりに兄に会えたから少しだけでも話せればと思ったんですが」
おお……夜がちゃんとしてる。
振り向いたら美海がおかしそうにしていて、つられて笑わないように顔に力を入れた。
「それは、でも」
「すみません、先輩。少しだけでも、久しぶりに会った兄妹と、会話だけでもさせてもらえませんか?」
匠海さんが夜に合わせるように、申し訳なさそうに言った。
「……す、少しだけなら」
女の人は気まずそうに一歩下がった。
匠海さんは夜の頭をくしゃっと撫でてから、私をぎゅっと抱き寄せた。
「美海、焼きそば、うまかった?」
「まだ食べてないって」
美海が笑って答えたけど、私は匠海さんに埋もれていて全然見えない。
「カレーも美味かったからオススメ。あと自分でカルメ焼き作るコーナーあった」
「あとで行ってみる。……お兄ちゃん、あの人、なに?」
美海がささやいた。
「んー、俺の担任の先生のゼミ生」
「彼女?」
「まさか」
「だよね」
匠海さんは私をぎゅうぎゅう抱きしめたまま、美海とひそひそ話している。
私はおとなしく匠海さんの背中に手を回して、しがみついた。
「匠海さん、詩音のこと何か言った?」
夜が小声で聞いた。
「いや? あー、詩音ちゃんと飯食ってたのを先生に見られて『川瀬が超お嬢様とデートしてた』っつうのを先生が言いふらしてた」
「あー、なるほど」
夜は何かを納得したみたいだった。
何でもいいけど、匠海さんはいつまでこうしてるんだろ。
「匠海さん、ちょっと詩音の耳元に顔を寄せてもらえる? ……美海、あのさ」
夜が言い終わる前に、匠海さんが腕の力を緩めた。
「詩音ちゃん、バタバタしちゃってごめんね」
「ん、ううん。忙しいときにごめんなさい」
「焼きそば、めっちゃ美味いから食べて」
「わかった」
「先に部屋で待っててくれてもいいけど」
「それは寂しくなるから、ヤダ」
「だよね。ごめん、甘えた」
「いいよ。でも今度、どっか連れてって」
「うん、行きたい場所、考えておいて」
匠海さんは私の耳元でぼそぼそ囁いた。
最後にもう一度強く抱きしめてから、ゆっくり私の体を離した。
「じゃ、美海、母さんと親父によろしく」
「うん。冬休みには帰ってくるでしょ?」
「そのつもり。また連絡する。……で?」
匠海さんは私の肩に手を置いたまま、言った。
「かわいい妹との感動の再開を中断してでも運ばなきゃいけない荷物ってなんすかね?」
そしてお姉さんは、私を見下した。
「妹さん?」
「や、違います。俺、先に休憩入らせてもらったんで」
「えー、困るよ。ちょうど焼きそばの麺がきれちゃったし、野菜ももう少ないから、取りに行ってもらおうと思ったのに」
お姉さんはちらりと私と、近くにいた美海を見た。
……なんか、嫌な感じ。
そう思ったのが顔に出ちゃったみたいで、匠海さんが私に手を伸ばした。
でも、その手をお姉さんが取った。
「妹さんなら自分たちでのんびり周ってもらえばいいでしょ。また落ちついたら合流したらいいし」
ふと、私の前に夜が立ちふさがった。
「すみません、夏休みぶりに兄に会えたから少しだけでも話せればと思ったんですが」
おお……夜がちゃんとしてる。
振り向いたら美海がおかしそうにしていて、つられて笑わないように顔に力を入れた。
「それは、でも」
「すみません、先輩。少しだけでも、久しぶりに会った兄妹と、会話だけでもさせてもらえませんか?」
匠海さんが夜に合わせるように、申し訳なさそうに言った。
「……す、少しだけなら」
女の人は気まずそうに一歩下がった。
匠海さんは夜の頭をくしゃっと撫でてから、私をぎゅっと抱き寄せた。
「美海、焼きそば、うまかった?」
「まだ食べてないって」
美海が笑って答えたけど、私は匠海さんに埋もれていて全然見えない。
「カレーも美味かったからオススメ。あと自分でカルメ焼き作るコーナーあった」
「あとで行ってみる。……お兄ちゃん、あの人、なに?」
美海がささやいた。
「んー、俺の担任の先生のゼミ生」
「彼女?」
「まさか」
「だよね」
匠海さんは私をぎゅうぎゅう抱きしめたまま、美海とひそひそ話している。
私はおとなしく匠海さんの背中に手を回して、しがみついた。
「匠海さん、詩音のこと何か言った?」
夜が小声で聞いた。
「いや? あー、詩音ちゃんと飯食ってたのを先生に見られて『川瀬が超お嬢様とデートしてた』っつうのを先生が言いふらしてた」
「あー、なるほど」
夜は何かを納得したみたいだった。
何でもいいけど、匠海さんはいつまでこうしてるんだろ。
「匠海さん、ちょっと詩音の耳元に顔を寄せてもらえる? ……美海、あのさ」
夜が言い終わる前に、匠海さんが腕の力を緩めた。
「詩音ちゃん、バタバタしちゃってごめんね」
「ん、ううん。忙しいときにごめんなさい」
「焼きそば、めっちゃ美味いから食べて」
「わかった」
「先に部屋で待っててくれてもいいけど」
「それは寂しくなるから、ヤダ」
「だよね。ごめん、甘えた」
「いいよ。でも今度、どっか連れてって」
「うん、行きたい場所、考えておいて」
匠海さんは私の耳元でぼそぼそ囁いた。
最後にもう一度強く抱きしめてから、ゆっくり私の体を離した。
「じゃ、美海、母さんと親父によろしく」
「うん。冬休みには帰ってくるでしょ?」
「そのつもり。また連絡する。……で?」
匠海さんは私の肩に手を置いたまま、言った。
「かわいい妹との感動の再開を中断してでも運ばなきゃいけない荷物ってなんすかね?」



