詩音と海と温かいもの

 私、矢崎詩音は駅で美海と夜と合流した。


「一ヶ月ぶり!」


 美海とキャアキャア言いながら抱き合って、夜とも「いえーい」ってハイタッチして、それからバス停に向かった。

 今日は匠海さんの通う大学で、文化祭が開かれている。バスを降りると、中学とは全然違って、大学はお祭りみたいに盛り上がっていた。


「すごーい、中学と全然違う!」

「ねー、夏祭りみたい。お兄ちゃんどこかな」

「あっちで地図を配ってるから、もらいに行こうか」


 三人で地図を覗き込んで、匠海さんから聞いていた焼きそば屋さんを探した。


「あ、あっちだって」

「行こう行こう」

「匠海さんいるかな」

「詩音、休憩時間とか聞いた?」

「うん、昼過ぎに休憩入るから、一緒に回ってくれるって」


 無事に焼きそばの屋台を見つけたけど、昼時で焼きそば屋さんは大混雑だった。

 二十分くらい並んで、やっと先頭までやってきた。


「すみません、川瀬匠海いますか?」

「川瀬? 川瀬ー、お客さんー!」

「へいへい、あ、来た? 焼きそば大盛り食える?」


 匠海さんは汗びっしょりで、頭にタオルを巻いて焼きそばを焼いていた。

 美海と夜、それから私に、山盛りの焼きそばを渡してくれた。


「どの子が川瀬の美少女なんだ? 真ん中?」


 匠海さんを呼んでくれた人が私達を指差した。


「んなわけあるか。一番左」

「はー、たしかに……すごいな……」

「お兄ちゃん、何言ったの?」

「こいつは妹、その隣は幼馴染」


 匠海さんに紹介されて、美海が慌てて頭を下げた。


「えっ、川瀬美海です。兄がお世話になってます」

「いやいや、そんなご丁寧に……本当に妹? お前の十倍しっかりしてっけど」

「う、うるせえな」

「つーか、妹ちゃんと美少女ちゃんが来たんなら休憩行けば?」

「マジ? サンキュ。行こう行こう」


 匠海さんが頭のタオルを取って、肩にかけた。

 そのまま屋台から出てきて、ひらひらと手を振った。


「匠海さん!」

「よーお。ありがとね、来てくれて」

「うん! あのね、詩音、あっちの……」


 駆け寄ろうとして、私は足を止めた。

 綺麗なお姉さんが、匠海さんの隣にやってきたから。