詩音と海と温かいもの

 その日の夜、風呂上がりにスマホが鳴った。


『匠海さん、今日は来てくれてありがとー!』

「こっちこそ、呼んでくれてありがと。楽しかった」

『それならよかった。……あの、どうだった?』

「なにが?」


 スマホの向こうで、詩音ちゃんが唸っているのが聞こえた。


「メイド服なら似合ってた。他にも来てる子はいたけど、詩音ちゃんが一番かわいかった」

『そ、それは言い過ぎだけど、えへ、ありがと』


 全然言い過ぎじゃないけど、美海に「ほどほどにね」と釘を刺されていたので、黙っておいた。


『あのね、お出かけしようって言ってくれたでしょ? まだ思いつかなくて』

「そうだなあ。あ、俺も文化祭あるんだよ。美海と夜とおいでよ」

『やったあ、楽しみにしてる』


 文化祭の日付や、俺が参加する出し物の話をしてから、電話を切った。

 俺はそのまま、スマホで今日撮った写真を見た。

 詩音ちゃんと美海と夜が三人で笑っている写真。

 詩音ちゃんがスカートを翻して笑っている写真。

 詩音ちゃんが……。

 スマホの写真アプリは、詩音ちゃんと食い物でいっぱいだった。

 少し前に、ここで撮った写真もあった。

 ベッドで抱き合って撮った、たくさんの写真。

 なんつーか、冷静に考えると犯罪臭いな……。

 あの時最後に撮った写真は顔をくっつけ合っていて、たぶん少し横を向いたら口がぶつかってた。

 二人とも眠そうな顔で写ってるから、うっかりしちゃってもごまかせたかもしれない。


「……俺はアホかよ」


 スマホの画面を消した。

 そのまま充電ケーブルにつないで、ベッドに放った。

 部屋の明かりを消して、俺もベッドに倒れ込む。



 目を閉じても、詩音ちゃんの笑顔は消えなかった。