詩音と海と温かいもの

 初めて来た小崎町の夏祭りは、思っていたよりも人が多かった。


「あ、佐々木。うわ、女子連れてる、ウザ」

「羨ましければ彼女作れよ」

「そんな簡単にできたら苦労しねーわ! くっそ、根子も女に囲まれてたし」

「あはは」


 夜が中学のお友達と話しているところを初めて見た。

 なんか、前より男の子っぽい喋り方でびっくりする。


「あのね、夜は学校だとカッコつけて、自分のことを『俺』って言ってるんだよ。」

「あ、そうなんだ?」


 美海が笑いを噛み殺しながら言うから、吹き出しそうになるのを必死でこらえた。


「でも私やお兄ちゃんしかいないと「僕」に戻るの。かわいいよね」


 そうだったんだ。

 なんていうか、みんな少しずつ大人になっていくんだなあ。

 私もそうならないといけないのは分かってるけど。

 話し終えて戻ってきた夜と合流して、また三人でぶらぶら歩き回った。

 たこ焼きと焼きそばを分けて食べて、盆踊りの櫓のところまでやってきた。


「なんか甘いモノ買ってくるよ。美海と詩音はここで休んでて」


 私たちをベンチに座らせると、夜は綿飴の列に並びに行った。


「詩音はそろそろ戻るんだよね?」

「うん。新学期前に寮の部屋の掃除とか、布団干したりもしたいしね」

「寮、楽しい?」

「うん、慣れると楽しいよ。学校に行くのも楽だし、ごはんも食堂に行くだけでいいしね。あー、でもごはんは匠海さんと食べるほうがおいしい」

「それは仕方ないね。お兄ちゃんのごはん、おいしいから」


 のんびり話していたら、目の前に誰かが来た。

 夜かと思って顔を上げたら、知らない男の人たちだ。

 美海の知り合いかと思ったけれど、美海も不思議そうな顔をしていた。


「君たち、二人だけ?」

「……え?」

「俺らも男二人でさ、ちょうどいいから一緒に周ろうよ」

「あの、人を待ってますので」


 美海が嫌そうな顔で断った。

 でも男の人はニヤニヤしながら顔を近づけてきた。


「ちょっとくらい、いいじゃん。まだ来ないって」

「困ります!」

「この子らに、何か用?」


 思わず声を上げたとき、男の人の後ろから別の声がした。