詩音と海と温かいもの

 匠海さんは何回か向きを切り替えてから、駐車場に車を駐めた。


「んー、まだ斜めになってる気がする」

「ちょっとくらい斜めでもいいよ。ねえ、匠海さん、詩音、お団子食べたい」

「先にトイレ行かせて」

「あ、じゃあ詩音もそうする!」


 それぞれお手洗いを済ませてから、手をつないでパーキング内にある広いショッピングエリアを散策する。

 夏休みだから人が多くて、私はもみくちゃになった。


「し、詩音ちゃん、大丈夫?」

「なんとか。匠海さんは?」

「ダメかも」

「あはは、ごはん食べよう。でもフードコート混んでるね」

「じゃあ外の売店で買って、海岸の方で食おうよ」


 海辺のパーキングエリアだから、海岸沿いにもパラソル付きのベンチが並んでいた。

 陽射しがきつくて暑いから空いている。

 二人でお団子やおにぎりを買ってベンチに腰を下ろすと、思ったよりずっと静かで、波の音くらいしか聞こえなかった。


「おいしいねえ」

「なー。帰りもここで飯食って帰ろうか」

「そうしよう。次は夜がいいな」

「まだ夜の運転は怖いかな……」

「そっかあ。じゃあ朝」

「いいねえ」


 のんびりごはんを食べてから、私たちはまたパーキングのショッピングエリアに戻った。

 人混みに入る前に、匠海さんの手が私の手を握った。


「はぐれないように掴んでて」

「うん!」


 大きな手は少し汗ばんでいたけど、たぶん私の手の方がもっとベタベタだと思う。

 美海と夜、川瀬さんのパパとママにお土産を買って、ちょっとヨレヨレしながら車に戻った。


「いや、マジ混んでた。なんなんだ……」

「夏休み始まったばっかだからね。たぶん新幹線だともっとすごいよ」

「これ以上とかあんの? 都会やべーな」

「今度案内してあげるよ」

「……手、離さないでね。そんなとこではぐれたら、俺行き倒れちゃう」


 匠海さんは苦笑しながらシートベルトを締めた。私もシートベルトをしたことを確認して、エンジンをかける。


「よし、帰ろうか。あんまり遅くなると美海が心配する」

「そだね。さっきから、何時くらいになるのかずっと連絡来てるよ」

「マジか。安全運転で行くから、もうちょいかかるって言っておいて」

「はあい」


 私が美海に返信している間に、車が走り出した。

 高速道路はそこまで混んでいないから、夕方までには小崎町に着けそうだ。

 私は車が止まるまで、匠海さんばかり見ていた。