詩音と海と温かいもの

 次の土曜日。昼前に匠海さんが迎えに来てくれて、一緒にバスで匠海さんの部屋に向かった。

 途中のスーパーで買い物をしてから、並んで歩いた。

 当たり前みたいに手をつないでくれて嬉しいけど、私って匠海さんのなんだっけ? とは思う。


「カフェとか行けたらいいんだけど、給料日前なんだ」


 申し訳なさそうな顔をする匠海さんに、私は首を横に振って見せた。


「ううん。私こそ、しょっちゅうお邪魔してごめんなさい。それに、匠海さんの作るごはん好きだから楽しみだよ」

「いーよ。それに今日は俺がおいでって言ったしさ。晩飯どうしよっか。昼飯の時に多めに作る?」

「匠海さんは?」

「バイト中にまかない食うよ。あ、じゃあ帰りに餃子とか炒飯とかテイクアウトできるものもらってくるよ」

「やったあ。それ、匠海さんが作ったやつ?」

「手が空いてればね」

「嬉しい。あ、先にお金渡しとくね」

「別にいいのに」

「ダメだよ。そういうとこで甘えたくない。んー……詩音、ただでさえ匠海さんの負担になってるから」


 そう言うと匠海さんは口をへの字にしてしまった。

 言いすぎちゃったかなあ。

 匠海さんはムスッとした顔で私を覗き込んだ。


「俺は詩音ちゃんのことを負担だなんて思ったことないけど」

「……そうなの?」

「俺が家で待っててって頼んだんだよ。でも、うん。わかった。お金はもらう。俺も仕事でやってるんだし。なあなあにしたら店長に怒られそうだし」


 なんとなくつないでいた手を握り直したら、匠海さんも強く握り返してくれて嬉しかった。

 部屋についたら一緒に焼きそばを作って食べる。

 玉子が入ってて美味しい。


「おいしい」

「そらよかった」

「匠海さんと食べるとおいしいねえ」

「俺も、詩音ちゃんと飯食うとおいしい」


 二人で片付けて、やっと勉強を始めた。

 でも最初は宿題から。期末試験前だから、宿題がすごく多い。

 匠海さんもレポートがいくつかあると言って、ノートパソコンを開いた。

 向かい合って、ほとんどしゃべらないで手を動かす。

 別に寮とか学校の図書室でもいいのに、匠海さんの顔を見てる方がはかどる気がする。たぶん気のせい。

 宿題の後は試験勉強。

 英語以外は、少なくとも平均くらいはいけると思うけど、どうかなあ。でも成績悪いと親に連絡行くし、夏休みも遊べない。

 それに内部進学して高校の間も寮で生活したいから、あまり成績は落とせない。

 今の私の成績は真ん中やや上くらい。

 せめて今くらいは維持したい。