詩音と海と温かいもの

 出てきた料理はどれも、本当に美味しかった。

 さっきの先生の腕がいいのはもちろんなんだけど……やっぱり匠海さんが笑ってくれるから美味しいんじゃないかな。

 たぶん、同じものを親や兄姉と食べてもこんなに美味しくないと思う。



 食べ終えて、もう一度先生に挨拶をしてホテルを出た。電車に乗ってから、匠海さんの腕から手を離した。


「詩音ちゃん、お腹いっぱいになった?」

「うん。なったし、すーっごく美味しかった」

「そりゃよかった。朝飯買って帰ろうぜ」

「そうしよう。あのね、コンビニに初夏の新作出てるから食べたい」

「マジで。探そう」


 離した手を迷わせていたら、匠海さんの手に掴まれた。

 きゅっと握ったら強く握り返してくれて、嬉しい。

 手をつないだまま電車を降りてコンビニに寄って、匠海さんの部屋に戻った。

 着替える前に一緒に写真を撮っておく。お化粧が崩れちゃってるから、先に撮っておけばよかった。

 お風呂を済ませて、一緒にベッドに横になる。


「詩音ちゃん、ちょっと髪伸びた?」


 大きな手が乾かしたばかりの髪をゆっくり梳いた。

 温かくて、眠くなってくる。


「うん、ちょっとだけ」

「ショートも似合ってたけど、これくらいでもかわいいよ」

「そうかな」

「かわいい」

「ありがと、匠海さん。……ありがと」


 匠海さんの胸元に顔を埋めた。

 温かくて、大きくて、いい匂いがした。

 瞼が重たくて持ち上がらない。

 なんとか腕を持ち上げて、匠海さんの背中に回した。


「おやすみ、詩音ちゃん」

「うん、おやすみなさい」


 優しく抱き寄せられて、同じくらいの力で寄り添って。

 寝るのがもったいないくらい、幸せだった。