詩音と海と温かいもの

 詩音ちゃんと朝ごはんにパンケーキを焼いて、一緒に食べた。

 でもバターもジャムも蜂蜜もなかったから、焼いたのをそのまま切り分けて食べた。


「近くでマルシェやってるらしいから、行ってみようぜ。うちの大学も出店してるんだってさ」

「行く!」


 二人で電車に乗って数駅先の大きな公園に向かった。

 広々とした公園で、人工の水路や噴水もあって、風が気持ちいい。

 広場でやっていたマルシェは大賑わいで、いつの間にかつないでいた詩音ちゃんの手を、つい強く握り直した。


「混んでるねえ」

「詩音ちゃん、人混み平気?」

「全然平気。詩音、都会っ子だから」

「俺は得意じゃないから、手え離さないでくれ」

「任せてよ。匠海さんの手、絶対に離さないから」


 音ちゃんがニコッと笑って、手を強く握り返してきた。

 二人で出店を見て回ると、いろんな地方からの出店があって楽しい。


「お、発酵バターだ。絶対美味いよな……。いや、こっちのクロテッドクリームも……」

「匠海さん、涎出てるよ」

「わ、悪い。つい」

「ふふ、はしゃいでる匠海さんかわいいから、全然いいよ」


 嬉しそうな顔にやたらと恥ずかしくなった。


「かわいいじゃなくて、かっこいいって言ってほしいんだけど」

「いつも思ってるよ。匠海さんのことかっこいいって」

「そ、そうなんだ」


 素直に言われると、それはそれで恥ずかしい。

 なにしろ詩音ちゃんは顔立ちがきれいだから、そんな顔で「かっこいい」なんて言われると勘違いしそうになる。

 いかんいかん、相手は中学生だ。

 保護されたから懐いてるだけで、その信頼を裏切るようなことはしたくない。

 妹の友達だし。


「匠海さん、あっちに蜂蜜あるよ」

「お、行ってみよう」


 一通りウロウロして、疲れたところで屋台のパンを買って休憩した。

 公園内のベンチは埋まっていたから、噴水近くの草むらに座って食べることにした。


「ピクニックみたいで楽しいね」

「シート、百均で買ってくればよかったなあ」

「帰りに買っていこうよ。匠海さんが嫌じゃなければ、また一緒にピクニックしたいな」

「じゃあ次は一緒に弁当作ろう」

「うん。楽しみにしてるね」


 詩音ちゃんはニコニコしながら大きなパンを頬張っていた。