詩音と海と温かいもの

 翌朝、腕の中で寝ていた詩音ちゃんは目元が少し赤かった。

 抱きしめ直して目を閉じた。

 まだ早いから、もう少し寝てよう。

 今起きると、下半身がアレだし。けしてやましい気持ちじゃなくて、ただの生理現象なんです……!

 脳内で誰かに言い訳しながら、詩音ちゃんを抱きしめて深呼吸した。


「匠海さん……」

「あ、ごめん。起こしちゃった?」

「んー、いつも、これくらいに起きてるから。おはよ、匠海さん」


 詩音ちゃんがぎゅっとしがみついてきた。

 下半身が当たらないように腰を引きながら、詩音ちゃんの髪を撫でた。

 細くて短い髪がさらっと流れた。


「そういえば、詩音ちゃんってずっとショートだよな」

「うん。長いと自分で手入れできないし。……おばあちゃんの家に行くときに長いと怒られるから」


 どっちも、なんでだよ。

 妹の髪は長いことが多かった。母さんが丁寧に梳いていたのを覚えている。

 女の子が髪を伸ばして怒る意味がわからない。


「伸ばしたいと思わないの?」

「短いのに慣れちゃったから、よくわかんないや。匠海さん、長いほうがいいと思う?」

「どっちでもいいけどさ。詩音ちゃんは美人さんだから、長くても似合うだろうなって思っただけ」

「……そっかあ。匠海さんは、詩音が髪伸ばしても、引っ張ら……えっと、なんでもない。髪を伸ばしたら、かわいいって思う?」


 俺は、言いたいことをいろいろ飲み込んで、短い髪を撫でた。


「思う。短くてもかわいいけど、長くても絶対にかわいい」

「ありがと。詩音、お腹空いた。そろそろ起きてごはんにしようよ」

「おう」


 腕を持ち上げると、詩音ちゃんが起き上がってきた。


「おはよう、匠海さん」

「うん、おはよう、詩音ちゃん」


 詩音ちゃんはニコニコしながらベッドから出て、洗面所に向かっていった。

 俺はそれを見送って、息を吐いた。

 あの子が中学生でよかった。

 どれだけ綺麗な子でも、どんなにかわいくても、とてもじゃないけど、手を出す気にならない。

 まあ、同世代のあれだけの美人は、俺なんか相手にしないんだけどさ。

 下半身が落ち着いているのを確認して、俺も顔を洗いに立ち上がった。