小崎町に着くと、美海と夜が出迎えてくれた。
「しおーん!」
「みうみー!」
二人は相変わらず抱き合っていて、なんだか安心した。
夜ともハイタッチしている。
「……お前、ちょっと見ない間にデカくなったなあ」
「でも匠海さんには届かなさそうです」
「そのまま俺より小さい夜でいてくれ」
「大人げないなあ」
俺より頭一個分以上小さかった夜は、いつの間にか顔が同じくらいの高さになっていた。
美海は相変わらず小柄だけど、よく考えたら母親と同じくらいの背丈だから、こんなものなんだろう。
詩音ちゃんと美海は並んでバス停に向かっていく。俺と夜も並んで後を追った。
「夜、高校どう?」
バスに乗ったところで、詩音ちゃんが夜を見た。
「楽しいよ。天文部あるんだ」
「いいねえ。美海は?」
「私も楽しいよー。あのね文芸部があるんだけど、英文を訳すグループがあってねえ」
バスに揺られて、俺と詩音ちゃんで二人の高校の話を聞く。
美海と夜は違う高校に通っているけど、それぞれ楽しくやっているらしい。
「美海は夜と違う高校でよかったの?」
「よくはないけどさ。でも夜と私で得意なことや、やりたいことが違うから。それに……ねえ、夜。学校に私より好きになりそうな女の子いた?」
「いない」
「ね」
「なにが『ね』なのさ」
詩音ちゃんが吹き出した。
なんつーか、美海は自信があるよな。俺はこんなにも不安で仕方ないのに。
詩音ちゃんが女子校だから、平気な顔をしていられるだけだ。
美海が詩音ちゃんの耳元でなにかを伝えた途端、詩音ちゃんが目を丸くした。
「え、本当に?」
「本当に。あとで見せてあげるよ」
「なに?」
俺が聞くと、美海が肩をすくめた。
「恥ずかしいから、後で詩音からこっそり聞いて」
「うん……?」
家に着いて荷物を置いたら、詩音ちゃんは美海の部屋に行ってしまった。
俺は夜に手伝わせて、晩飯の用意をする。
「匠海さん、さっきの話なんだけど」
「ん?」
「美海が詩音に言ってたやつ。美海と高校の相談をしたときにさ、僕、婚姻届を渡したんだよね」
「は?」
婚姻届……!?
中学生じゃ出せねえだろ……?
「渡したとき、美海も同じ顔をしてたよ」
夜がおかしそうに笑った。
「出せないけどさ、僕はそういうつもりで美海と付き合ってるよっていう……決意表明というか、プロポーズみたいなものかな」
「はあ……お前、重いんだなあ」
「う、うるさいな……。中学生に『大人になるまで待ってる』って言ってほんとになんの手も出さずに待ってる大学生に言われたくないよ」
「なんでそんなこと知ってんだよ」
夜はニヤッと笑った。
「僕、詩音とは付き合いの長い友達だからさ」
「うぜえ」
夜は中学三年生になってすぐくらいに美海に婚姻届を渡して、そのあと、それぞれ違う高校に行くことにしたらしい。
なんつーか、こいつは昔から行動力がどうかしてる。
保証人欄は、友達に書かせたそうだ。
うちの親は、それを知ってるのかなあ。
「進路は違ったけど、美海が僕にとって一番大事だっていうのは変わらない。それを美海に知っていてほしかったんだよ」
「……言ってることは純愛なのに、やり方がめちゃくちゃなんだよなあ」
「匠海さんは?」
「あ?」
「匠海さんは、詩音のことを大事にしてる?」
「してるつもりだけどな……」
「詩音は僕の大事な友達だからさ。泣かせたり困らせたりしないでほしいんだ」
「はいはい、分かってますよ」
小生意気な義弟(予定)の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
階段の方から足音がして、美海と詩音ちゃんが顔を出す。
「おにーちゃーん、ごはん!」
「『ごはん!』じゃねえよ、もう少し言い方があるだろうが」
「匠海さん、ごはんの用意手伝うよ」
「もうできるから、夜と皿並べてくれ。美海、親父たちは?」
「遅くなるけど、晩ごはんは家で食べるって」
「じゃ、取り分けて冷蔵庫に入れておこう」
子どもらに手伝わせて、晩飯を並べる。
俺が高校生の頃から変わらない光景に安心しつつ、同時にちょっと泣けてきて、自分がおっさんになったような気がした。
「しおーん!」
「みうみー!」
二人は相変わらず抱き合っていて、なんだか安心した。
夜ともハイタッチしている。
「……お前、ちょっと見ない間にデカくなったなあ」
「でも匠海さんには届かなさそうです」
「そのまま俺より小さい夜でいてくれ」
「大人げないなあ」
俺より頭一個分以上小さかった夜は、いつの間にか顔が同じくらいの高さになっていた。
美海は相変わらず小柄だけど、よく考えたら母親と同じくらいの背丈だから、こんなものなんだろう。
詩音ちゃんと美海は並んでバス停に向かっていく。俺と夜も並んで後を追った。
「夜、高校どう?」
バスに乗ったところで、詩音ちゃんが夜を見た。
「楽しいよ。天文部あるんだ」
「いいねえ。美海は?」
「私も楽しいよー。あのね文芸部があるんだけど、英文を訳すグループがあってねえ」
バスに揺られて、俺と詩音ちゃんで二人の高校の話を聞く。
美海と夜は違う高校に通っているけど、それぞれ楽しくやっているらしい。
「美海は夜と違う高校でよかったの?」
「よくはないけどさ。でも夜と私で得意なことや、やりたいことが違うから。それに……ねえ、夜。学校に私より好きになりそうな女の子いた?」
「いない」
「ね」
「なにが『ね』なのさ」
詩音ちゃんが吹き出した。
なんつーか、美海は自信があるよな。俺はこんなにも不安で仕方ないのに。
詩音ちゃんが女子校だから、平気な顔をしていられるだけだ。
美海が詩音ちゃんの耳元でなにかを伝えた途端、詩音ちゃんが目を丸くした。
「え、本当に?」
「本当に。あとで見せてあげるよ」
「なに?」
俺が聞くと、美海が肩をすくめた。
「恥ずかしいから、後で詩音からこっそり聞いて」
「うん……?」
家に着いて荷物を置いたら、詩音ちゃんは美海の部屋に行ってしまった。
俺は夜に手伝わせて、晩飯の用意をする。
「匠海さん、さっきの話なんだけど」
「ん?」
「美海が詩音に言ってたやつ。美海と高校の相談をしたときにさ、僕、婚姻届を渡したんだよね」
「は?」
婚姻届……!?
中学生じゃ出せねえだろ……?
「渡したとき、美海も同じ顔をしてたよ」
夜がおかしそうに笑った。
「出せないけどさ、僕はそういうつもりで美海と付き合ってるよっていう……決意表明というか、プロポーズみたいなものかな」
「はあ……お前、重いんだなあ」
「う、うるさいな……。中学生に『大人になるまで待ってる』って言ってほんとになんの手も出さずに待ってる大学生に言われたくないよ」
「なんでそんなこと知ってんだよ」
夜はニヤッと笑った。
「僕、詩音とは付き合いの長い友達だからさ」
「うぜえ」
夜は中学三年生になってすぐくらいに美海に婚姻届を渡して、そのあと、それぞれ違う高校に行くことにしたらしい。
なんつーか、こいつは昔から行動力がどうかしてる。
保証人欄は、友達に書かせたそうだ。
うちの親は、それを知ってるのかなあ。
「進路は違ったけど、美海が僕にとって一番大事だっていうのは変わらない。それを美海に知っていてほしかったんだよ」
「……言ってることは純愛なのに、やり方がめちゃくちゃなんだよなあ」
「匠海さんは?」
「あ?」
「匠海さんは、詩音のことを大事にしてる?」
「してるつもりだけどな……」
「詩音は僕の大事な友達だからさ。泣かせたり困らせたりしないでほしいんだ」
「はいはい、分かってますよ」
小生意気な義弟(予定)の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
階段の方から足音がして、美海と詩音ちゃんが顔を出す。
「おにーちゃーん、ごはん!」
「『ごはん!』じゃねえよ、もう少し言い方があるだろうが」
「匠海さん、ごはんの用意手伝うよ」
「もうできるから、夜と皿並べてくれ。美海、親父たちは?」
「遅くなるけど、晩ごはんは家で食べるって」
「じゃ、取り分けて冷蔵庫に入れておこう」
子どもらに手伝わせて、晩飯を並べる。
俺が高校生の頃から変わらない光景に安心しつつ、同時にちょっと泣けてきて、自分がおっさんになったような気がした。



